椅子の座面修理【備忘録】

木工のあれこれ

先日、仕事で椅子の修理の依頼が来ました。

座っていたら座面がバッキリ割れてしまったようです。
そのため、新しい座面に変えてほしいとの依頼が来ました。

現物を受け取って見てみると、座面の下に貫も入っておらずとんでもない構造の椅子でした。

サイドの貫もボウズ面なので、座面を一点で支えていることになりますね。

こりゃ、座ったら割れるだろうと納得です。

座面を作っただけでは今後また割れてしまうので、新たに貫を入れることにしました。
ホゾとしては蟻ホゾがいいのでしょうが、難易度が上がってしまうので三方胴付きとアングルで留めてあげることにしました。

材質はおそらくチーク材ですが、予算を抑えるためにブラックチェリー材で代用していきます。

貫の追加

まず、椅子にホゾ穴を掘ってあげます。
組まれた状態なのでほとんど基準となる面がなく難しいですが、前脚を基準にしてトリマーで掘ってあげることにしました。
ホゾ穴を掘るための治具はこんな感じ。

これでホゾ穴を掘ってあげます。

貫材は、上端に座面の下端Rをつけてあげます。
また、座面をボルトで止めれるように真ん中に穴が開けてあります。

そしてこの貫材を接着。

あとは、アングルで留めてあげれば強度も申し分ないでしょう。

座面の製作

座面は布地張りですね。

中は剥いてあげるとこんな感じ。

剥いた座面から上端のRや厚みを読み取ります。
これらを基に、座面を作る治具を製作していきます。
この時留意しておくのは、上端のRと下端のRは厚みによって違うということですね。
今回は、厚みが20mmなので下端Rは上端R+20mmとなります。

これをプレスで圧着して座面を作ります。

座面ができたら、任意の箇所に鬼目ナットを埋めておいてあげます。
あとは生地張りをしてあげれば完成ですが、私はできないので外注へと。
出来上がってきた座面がこれ。

この座面を本体と着けてあげれば完成です。
座面と本体はボルトで留めてあげます。

貫との接着面も隙間なくついています。

試しに座ってみても、安定感がかなり変わりました。
直す前は座ると座面がしなっていましたが、今は体重がちゃんと支えられているのがわかります。
貫を入れるだけで、強度って全然変わるんですね。

リペアは、基準がなかったり、分解や失敗が許されないことが多いので難易度が製作より上がってしまいます。
そのため、同じものをもう一度買った方が安く済む場合が多いです。
それでも直したいという人は一定数います。
そういう人に出会うと、価値はお金だけではないんだなと深く考えさせられます。

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