『CHANEL』、『HERUMES』、『GUCCI』...
世界でも憧れる人が多いハイブランドです。
価格についてもいい値段しますよね。
ここで考えたいのが、これらの会社が出している財布と同じ材料で私達が財布を作った時、同じ価格で売ることができるでしょうか?
おそらく無理じゃないでしょうか。
つまり物の価値は、商品そのものだけではなく、会社の歴史やデザイン、品質等も相まって決まるのではないかと思います。
このように、同じ商品であっても物の価値は変わってきます。
これらの価値を底上げするものをブランドと呼ぶのでしょう。
実はこのようなブランドは、材木業界でも存在します。
材木は、同じ樹種であっても地域(環境)によって成長の仕方は異なってきます。
成長の仕方が異なると、木目(見た目)や強度にも変化が見られます。
これらの材木が良木と認められて、ブランド材と周知されます。
そこで今回は、トップオブブランド材の『屋久杉』についてご紹介したいと思います。
屋久杉とは
屋久杉とは、屋久島の標高500mを超える山地に自生している杉のことです。
この杉が一般的な杉と何が違うかと言うとすべてが違うと言っても過言ではありません。
まずは”寿命”。
普通の杉の寿命は500年程度ですが、屋久杉は千年をゆうに超えます。
また、屋久杉の中に縄文杉と呼ばれる気があるのですが、この縄文杉は2,170~7,200歳です。
西暦よりも長い年数ですよね。
言い換えると、キリストが生まれるよりも前に生まれており、尚且つまだ生きているのです。
なんともロマンを感じませんか?
次は”木目”。
材木の価値を決定ずける大変重要な要素です。
木目は大変緻密で、美しい杢も見られます。
写真じゃ伝えられない美しさが屋久杉の木目にはあります。
次が”香り”。
めちゃくちゃ良い匂いです。
香りを言葉で表すだけの表現力が筆者にはないのですが、図鑑等にはミルクのような匂いと表記されています。
たしかにそれを聞いて匂いを嗅いでみると、まよらかな匂いがします。
そして最後に”材木としてのスペック”。
屋久杉は杉なので、軽いことはもちろん、一般的な杉と比較すると強度もあります。
また、樹脂分も多い事から腐りにくいという特性があり材木としては非常に優秀なのです。
屋久杉についてわかりやすく説明しているYoutubeがあったので、それも載せておきます。
プロの材木屋さんの説明なので、とても分かりやすいですよ。
なぜ屋久杉は屋久杉になるのか?
では、なぜ屋久杉は一般的な杉と異なってくるのでしょうか?
先ほど紹介した動画内でも紹介されていましたが、屋久杉はゆっくり成長するからです。
ゆっくり成長する理由としては、
・屋久島が花崗岩の島なので、土の栄養が少ないため。
・屋久島は1ヶ月で35日雨が降ると言われるくらい雨が降って、土の栄養が流れるため。
・木が生い茂っているので、光が当たりにくいため。
・木目が緻密になるため、樹脂が多くなり(防腐・抗菌・防虫効果が大きくなり)長寿となるため。
です。
世界中でも、屋久島の環境だからこそ生まれる杉なのです。
屋久杉の稀少性
1993年に屋久島が世界遺産に登録され、屋久杉の伐採に強い制限が設けられ始めます。
その後の2001年に屋久杉の伐採は全面禁止となり、土埋木のみが競りに出される状況が続きます。
さらに、2019年3月には搬出可能な土埋木も無くなったため、競りも終了してしまいました。
そのため、屋久杉材の稀少性が非常に高くなっています。
2015年3月の競りにて288万円/㎥を記録した記事が朝日新聞より出ていました。
杉の平均単価が3200円/㎥くらいなので、とんでもない金額だとわかると思います。
では伐採も禁止になり、今後新しい屋久杉工芸作品は出てこないのかと言われるとそれは違います。
と言うのも、元々木工家や材木屋の在庫や新たに台風で屋久杉が倒れた時に競りが行われたりで屋久杉材が全く手に入らないということもないのです。
実際筆者も、廃業した屋久杉家具屋から屋久杉材を買って屋久杉工芸品を作ったりしました。
競りもネットで調べれば2019年以後も行われている様子が伺えます。
ただ、稀少性は相変わらずです。
この稀少性から投資家の投機対象になりつつあるようで、、、
立ち位置的に屋久杉は、”金”と同じ位置にいるのかもしれませんね。
偽物も出回っている?
それだけ貴重なものなので、偽物も流通しているそうです。
普段木材に触れていない方には本物と偽物を見分けることはまず不可能でしょう。
宝石の偽物を見分けるのと同じですね。
そのため、店員さんから屋久杉ですと説明されたら普通に信じてしまうわけなので、知らずに買ってしまうなんてこともあるわけです。
ちなみに、昔から偽物としてよく出回っているのは『台湾ヒノキ』だそうです。
ちょうど、楽天で売られている台湾ヒノキがあったので見てみると、
写真だと結構似ているなと言う印象ですね。
Google画像検索なんかでも見てもらうと、目も詰まっており素人目には判別つかない感じですよね。
私も実物の台湾ヒノキを見たことないので何とも言えませんが、色味が薄く、木目が少し柔らかい印象を受けますね。
あと、匂いは全然違うでしょう。
ただ、加工してしまうと匂いは飛んでしまうのでその場での判断は難しいですが。
ここまで話してきましたが、偽物がダメだと言っているわけではありません。
なぜなら、木工品で樹種のスーパーコピーは普通に行われていることです。
突板やプリント、着色がそうですね。
これがダメなら、木工品の価格は暴騰することでしょう。
それは、皆さんの私生活を圧迫することに繋がります。
では何がダメかと言うと、お客さんに話す情報が嘘であることがダメなのです。
そして騙された結果、木工品自体を敬遠してしまう人が増えることが筆者は嫌なのです。
そのためにも、名前の響きだけで商品を買うのではなくその本質、木工品で言ったら木目の美しさも購入の判断に入れるのが良いのではないかと思うわけです。
出典・参考・引用
屋久島町立屋久杉自然館 『屋久島やくすぎ物語』平成27年7月
材木屋のせがれとおやじ 『【屋久杉特集①】 樹齢1500年の屋久杉一枚板テーブル/気になる驚愕のお値段は!?』 Youtube https://www.youtube.com/watch?v=a28obAMiIX0&t=9s
屋久島通信員・武田剛 『屋久杉の土埋木、価格高騰 来年度生産終了へ』 朝日新聞 2015年3月
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