みなさんは、木の色と言われると何色を思い浮かべるでしょうか?
多くの方は茶色と答えるのではないでしょうか?
これはおそらく、樹皮の色をイメージされて答えているのだと思います。
では改めてもう一問。
木の中の色は何色でしょうか?
これはどうでしょう?
白色と答える方もいれば、茶色と答える方、はたまた紫色と答える方もいらっしゃるかと。
これらはその通りで、木の中の色は様々な色が存在します。
この事実は、無垢材の作品を販売しているとほとんどのお客さんが驚かれることですね。
しかも様々な色が存在するだけでなく、木1本の中に2種類の色が存在しています。
そして色の付き方は樹皮側の方が薄くなっています。
なぜこのようなことになっているのか?
材料として使用する際には気にせずに使っていいのか??
今回はこれらについてお話していこうと思います。
幹の構造について
まずは理解を深めるために、簡単に幹の構造について見ていきましょう。
木を輪切りにすると年輪が見られると思います。
この年輪が見られるのは、季節によって気温・降水量が異なり細胞の成長の仕方が違うからです。
この春から夏にかけて成長した部分を「早材(夏材)」、夏から秋にかけて成長した部分を「晩材(冬材)」と言います。
ちなみに冬の間は休眠期となっていて成長していません。
つまり、気温変化の少ない熱帯産の木材は年輪が不明瞭となっています。
ただ、雨季と乾季が明瞭に区分できる地域に生育するものには年輪が認められます。
赤身と白太とは
丸太の中心部の比較的色の濃い部分を「赤身(心材)」と言い、樹皮側の色の薄い部分を「白太(辺材)」と言います。
赤身が白太より色が濃いのは、赤身へと変化する際に細胞中の物質が付着したり、細胞壁が化学変化によって着色するためと言われています。
木工商品を作る際は、白太を落として赤身だけで作品を作ります。
これは白太にはない大きなメリットがあるためです。
赤身のメリット
赤身のメリットは次のようになります。
①色がきれい
この赤身の色が木材の色として認識されている色です。
本当に色んな色があって、紫色をした木なんてのもあります。
上の写真はパープルハートという木材ですが、赤身は紫色で白太は白色と全く違う色になっています。
面白いですよね。
このような珍しい色・人気色の木は高価な材木となってきます。
ただ注意したいのが、同じ樹種であっても育った地域や乾燥のさせ方で発色が異なってくること。
そして個体差があることです。
言ってしまえば人間と同じようなものです。
つまり産地や仕入時期が異なってくると、色が異なるため接ぎ合わせには使えない・・・なんてことも。
②腐りにくく、虫に食べられにくい
一般的に、白太に比べて腐りにくく虫にも強いです。
これは赤身になると腐りにくくなる成分や防虫成分を多く含むからだそうです。
つまり水回りや害虫対策としてとても優れています。
またこれは赤身と白太どちらにも言えることですが、材木を購入した時点で虫が中にいる可能性があるということです。
これを納品前に気づけたらいいのですが、納品後にひょっこり虫が出てきたとなるとクレームになってしまいますよね。
③強度がある
強度は白太より赤身部の方があります。
強度を持たせたい部位は赤身を使用する方が好ましいと言うことです。
赤身の方が堅いため、虫も柔らかくて食べやすい白太を食べているのですね。
④狂いが小さい
狂いも白太より小さいです。
狂いと言うのは木の反りやすさのことです。
反りは木工品の一番の敵です。
反りのせいで、引き出しも開かなくなるし、天板も割れてくることがあるのです。
そして何よりも、反りを調整しながらの作品作りは本当に骨が折れます。
赤身のデメリット
もちろん赤身にもデメリットは存在します。
①歩留まりが悪い
これが最大のデメリットです。
赤身だけ使おうとすると材料代がどんどん高くなっていきます。
白太は削ぎ落してしまうわけですからね。
歩留まりが非常に悪くなります。
そのため見えない所の部材には、白太の混在を使ったりしてコスト削減に努めることが多いです。
②色は白太の方が白い
より白い作品・明るい作品を作ろうとする場合は白太を使う場合があります。
栃なんかがそうでしょうか。
③節が多い
枝打ち等して管理しているので、赤身の方が節が多くなります。
最近は節の入った天板を味として売っている会社を見ますが、綺麗さで言うと節が入っていない方が綺麗な印象の作品になります。
結局赤身と白太どっちを使えばいいのか?
強度や水回りを気にする物なら赤身を使う。
そもそも趣味で作るようなものであれば、気にする必要はないと筆者は思います。
あとこれはちょっとした裏技ですが、
家具職人として独立したてでお金がないという人は赤身と白太の色があまり違わない材木を選ぶのがいいです。
白太を落とさず使えるので、歩留まりを抑えることができるわけです。
とここまで色々とお話してきました。
この知識を入れながら、作品を作るとまた質の良い作品が出来上がるかもしれませんね。
出典・参考・引用
東京農工大学農学部 『日本木材学会 組織と材質研究会・「樹木年輪」研究会 合同シンポジウム 講演要旨集』 2019
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 基盤整備センター『職業訓練教材 木工材料』(改定3版6刷) 一般社団法人 雇用問題研究会 2017年
スポンサーリンク
コメント